この20年間、ドル高・円安の限界水準といった役割を果たしてきた日米卸売物価基準の購買力平価が、3月末現在で115.27円まで下落、これまでのドル安値を更新した。この20年間の購買力平価と実勢相場の関係からすると、これはドル高・円安の行き過ぎがかなり限界に近づいており、価格的にはせいぜい121−122円があるかどうか、日柄的には1−2ヶ月以内に115円割れのドル急落がありうる意味になる。 1985年のプラザ合意でドルが急落した以降の約20年間で、ドルがこの日米卸売物価基準の購買力平価より割高になったのはごくごく短期間しかなく、しかも最大でせいぜい4−5%に過ぎなかった。
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たとえば2005年12月。この時の購買力平価は115.56円だったのに対し、実勢相場は121.40円までドル高が進んだ。つまりドルは購買力平価より5%の割高となったのであるが、その後ドルは急反落に向かった。
このように、この購買力平価はドル高・円安の行き過ぎおよび限界の目安といった役割を果たしてきたわけだが、それが3月末現在で115円台までドル安・円高になっているということである。5月現在の購買力平価もかりに115−116円程度だとするなら、ドルはそれより5%の割高になったとしても121−122円という計算になる。
こんなふうに見てくると、4日発表の米雇用統計が予想より悪い「ネガティブ・サプライズ」だったにもかかわらずドル高・円安傾向に著変ない状況が続いているドル円相場だが、かといって一段のドル高・円安余地はさほど大きいとは考えにくいだろう。
ところで、ドルがこの購買力平価を継続的に上回ったのは、2001年12月から2002年4月にかけての5ヶ月と、2005年10月から2006年4月にかけての6ヶ月などが最長。じつは、今回の場合、昨年11月から購買力平価を上回るドル高が続いており、もしもこの5月もそれが続くなら7ヶ月連続で、ドル上ブレ継続期間の最長を更新することとなる。
ちなみに、この5月の購買力平価はこれまでのペースからすると115−116円程度と予想される。過去の経験則からすると、継続的に半年程度購買力平価より割高で推移したドルは、その後急落に向かった。その意味ではそろそろ一気に115円割れへ向かうドル急落が近づきつつある可能性もある。
また、季節性の観点からもドル安・円高のシナリオが想定される。今年の4月はドル高となったが、過去10年間で4−5月が2ヶ月連続ドル高となったのは2回だけ。1999年と2003年だが、このうち2003年は円高阻止の日本政府による巨額介入局面である。その意味では、日本企業の新年度入りでドル高・円安になりやすいとされる4−5月ながら、2ヶ月連続でドル高になる確率はきわめて低いということになる。
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そして、それ以上に大きく、上述の購買力平価が示すようなドル安・円高に向かう可能性はあるか。一つの鍵は米金利ではないか。米長期金利は、この数ヶ月ドル円と強い相関関係が続いている。米金利の動きが、当面のドル安・円高余地を見極める上できわめて重要な役割となりそうだ。注目された4日発表の米4月雇用統計は、ネガティブ・サプライズ、つまり事前予想よりかなり悪い結果となった。しかし9日予定のFOMCに向けて米利下げ予想はそれほど高まっていないようだ。為替でもドルが比較的底固い展開になっているのはそれが一因だろう。ではなぜ、早期米利下げ予想が高まらないかといえば、一つの鍵は米株高にあるだろう。米株と利下げの間には一定の関係が確認できる。米利下げ前には、株価の急落があるということだ。
これは、こんなふうに考えるとわかりやすい。株価とは景気を先取りするものとされる。そんな株価の急落は、景気の急悪化を先取りして起こるというのが基本だ。そして利下げは、景気の急悪化に後手にならないような対応が期待される。こんなふうに考えると、米利下げの前に株価の急落が起こるということは納得できる。この辺りが、前回3月FOMC前後とは大きく異なる環境といえるだろう。3月FOMC前は、2月末から3月にかけての世界同時株安が展開し、NYダウも最大で5%程度の反落となっていた。
しかし今回は、9日のFOMCを前に、NYダウは上述のようにむしろこの2ヶ月で10%の反発となっている。こういった中では、いくら人気統計の米雇用統計が悪化したからといって早期利下げ見通し浮上とならないのは当然であり、ドルがとくに対円で120円前後の高止まりを続けているのも、その関係が大きいだろう。
ところで、そんな米株と利下げのルールからすると、4日発表の米雇用統計がネガティブ・サプライズになったからといって早期利下げ予想急浮上といったムードになっていないのは当然だろう。米株、たとえばNYダウは、最高値更新が続き、3月の安値からこの間約1割の上昇となっている。
株価が景気を先取りするものということで、最近の米株の動きが景気を「正しく」先取りしているなら、景気はこの先急悪化する見通しなど全くないということになる。その中では、もちろん利下げが早期に必要になる可能性などないということになるだろう。
では、米株高が続いているということで、本当に米景気は心配がないのだろうかといえば、ちょっと気になるところもある。それは、米長期金利が低位横ばいを続けているということだ。
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そもそも、米長期金利と米株の相関性は低い。むしろ同じ株価でも、じつは米長期金利と日本株の相関性は高い。これは、日本株が「景気敏感」だということを示しているとの理解が基本だ。
そんな日本株は、このところ米株を含む世界的株高の中で戻りの鈍さが目立っている。しかしそれは、日本株が「間違っている」のではなく、むしろ米長期金利との関係から考えると、世界的景気減速への転換を、日本株こそが先取りしており、高値更新を続ける米株の動きの方が無域の先取りといった観点からは「間違っている」可能性もある。
景気の先取りという観点で「間違っている」のは日本株か、それとも米株か。それは、この間もみ合いが続いている米長期金利の動きで決着がつく可能性がある。米利下げ見通しと、ドル円の方向性を考える上でも重要な手掛かりとなりそうだ。 ドル円は依然として119円台というこの間のドル高・円安圏での推移が続いている。しかし、ドルは対円以外ではほぼ全面安。総合力で見るとむしろ史上最安値を更新し、「底割れ」に向かい始めた。そういった中で、「対円だけはドル高」といった状況がいつまで続くのか。いくつかの観点から、対円でもドル安に転換する兆しもないわけではない。 ドル円は、昨年10月頃から、米長期金利(10年債利回り)との相関関係が続いてきた。ところが、そんな両者の相関関係が先週後半からここ数日崩れている。米金利が発表された米経済指標の悪化に反応し低下したのに対し、ドル円は119円半ば前後で基本的にドルの「高原横ばい」が続いているのである。
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両者の相関関係から単純計算すると、米長期金利が4.65%を下回ってきたことから、ドル円はじつに118円を割れることになってもおかしくないという見通しとなる。5月1日の寄り付き水準119円半ばから考えると、ドルの反落リスクはかなりあるということになる。
また、こんな見方からもドルの対円での反落リスクは高まりつつあるというシナリオになる。じつは、ドルが対円で歴史的高値、つまり「大天井」を打った後の値動きには一定のパターンがあるが、そのパターンからすると、今年1月末の122.20円がドルの今回の「大天井」と仮定した場合、ドルはすでにいつ急落してもおかしくないようだ。
ちなみに、1990年に160円で大天井を打ったドル、そして2002年に135円で大天井を打ったドルは、それぞれ65−75営業日で5%以上のドル安に向かっていった。今回の場合は、122.20円の大天井から、じつはすでに5月1日で66営業日目を迎えている。つまりいつ115円に向かうドル安・円高となってもおかしくないわけだ。上記の2つの見方も、たとえば、前者の場合、ここ数日の米長期金利低下が「ダマシ」だったということならドルはもちろんそれほど下がらないことになる。今週は週末にかけて米雇用統計発表など重要な米経済指標発表予定が目白押しになっているため、それらを受けて米金利がどう動くかが重要だ。
また後者の場合も、あくまで1月末ですでにドルが対円でも大天井を打っていたと仮定した上でのシナリオだ。逆に今週以降もドルが大きく下がらなければ、じつはドルはまだ天井を打っていなかった可能性も出てくるわけだ。
ただし、ドルの対円推移が、全体の動きから孤立した特殊なものになっていることは事実だ。ドルの総合力を示す実効相場のうち、FRBが算出している主要通貨を対象としたメジャーインデックスは、4月30日には78.9まで下落。それまでの最安値79.2を大きく下回ってきた。
つまりドルは全体的には史上最安値更新、「底割れ」に向かい始めているのである。そういった中で対円だけの「孤高のドル」といった構図が試される局面を迎えているということは間違いないだろう。 円安は対ドルでは2005年から2年以上続いている。さらに、対ユーロではじつに2000年から7年も続いている。さて、そんな円安が今年もさらに続くことになるのか。もしも円安が今年終わるなら、その後の円高への転換は「過激」になるリスクがあるというのがこれまでの歴史の教えるところではある。過去20年間の、円安終了と円高終了は、それぞれ前者が90年160円、98年147円、2002年135円、そして後者が88年120円、95年80円、2000年101円だ。
ところで、それぞれ円安、円高が終了した後、その年のうちに逆方向へどれだけの動きになったかを調べてみた。すると、円安終了の年には、ドルが15−25%の急落(円高)となっていた。一方、円高終了の年には、13−30%のドル高(円安)となっていた。
この中で、最大に逆方向へ振れたのは、円高が終了し、ドルが一年で30%の急反発となった95年だ。これはいわゆる1ドル=80円の「超円高」が反転したケースである。それを除くと、他の2回の円高から円安への反転は13%。基本的には、円高から円安への反転より、円安から円高への反転の方が急な動きになることが多いといえそうだ。
以上を踏まえた上で、今年もしも円安終了となるなら、今年中に15−25%のドル急落(円高)リスクを想定する必要があるだろう。円安終了水準にもよるが、最低でも105円程度、場合によっては90円台の円高・ドル安がありうるという計算になるわけだ。ではなぜ、このように円安から円高への反転は過激なものになることが多かったかといえば、それは円安が理屈抜きで「自滅」という形で終わることが多かったからではないか。
歴史的な終わり方ということでは、円高と円安は大きな違いがある。円高の場合はG7が重要な役割を果たすのに対し、円安はそうではないということだ。
歴史的な円高の終わりは、87年12月の120円、95年4月の80円、99年11月の101円である。これらの前後ではいずれもG7がドル安ないし円高懸念を表明し、為替反転の重要なきっかけとなっていた。
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これに対して歴史的な円安終了は、90年4月の160円、98年8月の147円、2002年1月の135円だが、必ずしもG7がドル高ないし円安へ強く懸念を表明したことと為替の反転の間に強い因果関係は認められない。むしろ利上げでも介入でも止まらず、手がつけられなくなった円売りが自滅する形で終わるパターンが基本だった。
円安が自滅するというのは、一種のバブル破裂ということ。バブル破裂ということなら、円安から円高への転換が過激な結果になるのもある意味当然だろう。そして、そんな円安バブル破裂の典型が、私がよくこのレポートでも取り上げてきた「98年の悪夢」の相場だった。さて、問題は今回もそうなるかということだ。
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